2016年12月10日土曜日

【学問のミカタ】日本人がノーベル賞を受賞してよかった!

 数学担当の阿部です.今年は東京工業大学栄誉教授の大隅良典氏がノーベル生理学・医学賞を受賞しました. 日本人が受賞してほんとよかったですね.ブログのネタにも困らずに済んだというものです. さて,大隈氏は受賞後の会見を,次の言葉で結んでいます.

”私は「役に立つ」という言葉はとても社会をダメにしていると思っています。それで科学で「役に立つ」って、 数年後に企業化できることと同義語みたいにして使われる「役に立つ」という言葉は、私はとても問題があると思っています。 本当に役に立つということは10年後かも20年後かもしれないし、100年後かもしれない。 そういう何か、社会が将来を見据えて、科学を一つの文化として認めてくれるような社会にならないかな、 ということを強く願っています。”
(東京工業大学「ノーベル生理学・医学賞2016 大隅良典栄誉教授 ノーベル賞受賞決定第1回記者会見 会見録」より)

  これを聞いたとき,「m9(`・ω・´) そう!!」とテレビにむかって声が出てしまいました. 数学をやっていると「それが何の役に立つの?」って質問はシャワーのように浴びますから. みなさんはどうですか?勉強するとき,役に立つことだけをやろうとしていませんか? もちろん役立つことを勉強したいと思うのは自然なことだと思います. でも,役立つことだけ勉強してたら,いつまでたっても夢中になる瞬間は訪れません. 「一芸を成し遂げた人は,何かに夢中になっていただけのこと」とタモさんも言ってました. 発明王エジソンの実験にまつわる逸話ですが, 彼の助手が「何ヶ月もこの実験に取り組んでいるのに、何の成果も出せないなんて悔しいです!」と言ったとき, エジソンは「いやいや、私はたくさんの成果を手に入れたぞ!何千もの事柄がうまくいかないとわかったんだから」と返答したそうです. 何かに夢中になっていると,役に立つことと無駄なことの区別なんて超越してしまうのでしょう. 大隈氏の言う「文化」もそういうところから生まれてくるのかもしれません. 何と言っても我々は「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」ので,文化的であることを大事にしてきた国民です. そういうものの中に豊かさの源泉があることをよく知っていたはずです.

  何かに夢中になれることは幸せなことです.人生を豊かにしてくれます. 文化的でない生活を送ることほど虚しいことはないです. みなさんが虚ろな人間にならないよう夢中になれるものを見つけられることを願っています.

【学問のミカタ】12月のテーマ「ノーベル賞」
・経済学部ブログ「取引費用とノーベル経済学賞
・経営学部ブログ「ノーベル賞のプロモーション効果
・コミュニケーション学部ブログ「ディランのノーベル賞騒動で思ったこと
・現代法学部ブログ「奥山ゼミの北欧ゼミ研修