2015年11月19日木曜日

【学問のミカタ】葵祭での講演会報告

「地球の科学」ほか担当の新正です。

11月の共通テーマは「文化祭」ということで、東経大の文化祭→学園祭である「葵祭」での講演会のレポートを行わせていただきます。葵祭のいわれについては経営学部ブログに本藤先生が書かれているのでごらんください。

全学共通教育センター教員の相澤と新正、経営学部教員の板橋が加わって活動している「図書部」が葵祭期間中に図書館で講演会を行いました。葵祭期間中の2日間はオープンキャンパスも行われており、それに対応して図書館も一般公開を行っています。そこでそれに合わせて開催した次第です。

初日の10月31日(土曜日)にはコミュニケーション学部の桜井哲夫先生にご登壇いただきました。桜井先生には、「戦後漫画の原像」と題して、今年3月に出版されたご著書「廃墟の残像」をもとにお話をいただきました。

現在の日本にも存在する廃墟の話から、戦後漫画史と現代史を絡めて、広く、深いお話が展開されました。満州から引き揚げた漫画家、手塚治虫の空襲体験、画法の斬新さ、酒井七馬との確執等々、どんどん興味深いお話が展開されます。劇画が国分寺の「ことぶき荘」から始まったことなど、国分寺関連のお話もふくまれ、聴衆の注意を集めました。最後は、福島原発事故に先だって描かれた『コッペリオン』の紹介でお話を閉じられました。

終了後、この内容を授業で扱っておられるか質問がでて、「 戦後史のなかの日本マンガ」で教授されている旨の返答に、一同、学生が羨ましい、の声が上がりました。

2日目の11月1日(日曜日)には経営学部の大岡玲先生(図書館長)に、「虹や月あかりからおはなしをもらつてきた作家・宮澤賢治」という演題でお話をいただきました。ホワイトボードを用いつつ、90分にわたり、精力的に語っていただきました。講演タイトルの「虹や月あかり…」の一節は数少ない生前に刊行された童話集『注文の多い料理店』の序から引かれたもので、賢治の幻視者としての側面に言及されました。そして賢治の人物像に関する様々な見地から、その作品のパターンについて解説されました。作品の概念化、物語化を嫌うこと、全能感の持ち主でありながら時に無力感に苛まれる振れ幅の大きさ、卑怯な大人が大嫌いでありながら本人はかなり悪質ないたずらをしたことを得々と語るなど善・悪を揺れ動くことなど、複雑な人物像をエピソードや作品例に言及しながら描かれました。

両先生とも大変豊かなお話をしていただき、贅沢な2日間でした。ネット時代ですので、講演についての感想がいくつかネット上にあがっています。下にそれらへのリンクを貼らせていただきます。
【桜井先生の講演の感想&レポート】
Facebook上の投稿Twitterへの投稿
【大岡先生の講演の感想&レポート】
個人ブログTwitterへの投稿

なお、ご講演に合わせて、先生方のご著書に添えて、手塚治虫関連本、宮澤賢治関連本の展示を図書館ブラウジングスペースでおこない、聴講者はもとより、一般の図書館見学者にも手にとってご覧いただきました。
大岡先生のご著書と宮澤賢治関連本
桜井先生のご著書と手塚治虫関連本


「図書部」ではこれまでも、様々なトークイベントなどを行ってきました。その幾つかについて下にリンクします。

トークイベント「宮澤賢治と星と石」(2015年7月9日)
ブックトーク「恋する〈私〉を哲学する」(2015年1月9日)

2015年11月16日月曜日

TKUサイエンスカフェ「豚インフルエンザについて」

 皆さん、こんにちは。生物学の大久保奈弥です。この度、11月10日(火)に、学習センターでサイエンス・カフェを行いました。今回の講師は、私の大学院時代の後輩で、国立開発研究法人 農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所の主任研究員をしている竹前喜洋博士です。

 学生時代から超優秀だった彼は、現在、鳥インフルエンザウイルスの豚への適応機序についての研究、豚インフルエンザウイルスの抗原性解析、ベトナムにおける豚インフルエンザウイルスのサーベイランスに従事しています(言葉が難しいですね)。ま、要するに、豚インフルエンザがどういう環境で発生するのか、豚インフルエンザウイルスは豚にどういった影響を起こすのか、といったことを研究しているということです。

 7年ぶりに会ったら大分貫禄が出ていて驚きましたが、それもそのはず、年に4分の1以上はタイやベトナムに出張してバリバリ働いているとのこと。研究の最前線で活躍しているのです。さすがですね。

 カフェでは、豚インフルエンザウイルスにかかった豚さんが、はくしょん、と可愛いくしゃみをしている動画も見せてくれました。他にも、タイで新しく日本と共同で研究室を立ち上げるのに携われたこと、豚インフルエンザウイルスが北米で人間にも感染したこと、どういう農場が豚インフルエンザにかかりやすいか、など、すごく面白いお話をして頂きました。

 昔から豚インフルエンザウイルスが人間にかかることが知られていて、今のところはそれほど怖がることはないようです(あくまでも、今のところね)。ただ、驚いたのは、豚インフルエンザウイルスにかかると豚は、成長率が低下して、出荷が遅れてしまうので、経済被害があるということです。また、生物学の立場から面白かったのは、インフルエンザウイルスが豚と人に感染すると、人に感染したときの方が遺伝子の突然変異するスピードが速いということです。簡単に言えば、豚の場合、農場の中での寿命が人間に比べてずっと短いことが関係しているみたいです。これはすごいデータです。

 ちなみに、ウイルスというのは生物ではありません。生物に感染して生きている非生物です。
色々な生き物にとりついて、しょっちゅう遺伝子の変異を起こしてます。こういった最先端の研究者の話を聞いて、自分でどのように体を守ったらよいか、考える必要がありますね。 大変勉強になりました。ありがとうございます。

サイエンスカフェの様子

2015年11月3日火曜日

三鷹・星と宇宙の日2015


 「自然の構造」の講義と総合教育演習の「天文ゼミ」の担当の榎です。今回は、1024日(土)に、天文ゼミの学生さんたちと見学に行った、国立天文台三鷹キャンパスの特別公開「三鷹・星の宇宙の日2015」の報告をします。

 国立天文台三鷹キャンパスは、「常時公開」されており、一部施設の見学ができます。また、月に2回、望遠鏡で天体を見る「定例観望会」が開かれています。これらとは別に、年に一回、特別公開日である「三鷹・星と宇宙の日」があります。この時には、通常は見学できない施設も公開され、研究部署ごとの研究展示や、講演会、天体観望会などが行われます。

太陽フレア望遠鏡にて
 今回は、通常は公開されていない、「太陽観測所」の太陽フレア望遠鏡などの施設を見学しました。放送衛星から送られてくる電波を手で持った中華鍋でキャッチしてBS番組を見る体験もしました。また、「天文データセンター」が特別公開日に毎年行う「銀河探しゲーム」にも挑戦しました。このゲームは、星空の画像をパネルに並べ、その中から指定された銀河を見つけ出すというゲームです。今年は、ハワイにある「すばる望遠鏡」の新しい観測装置である、「Hyper Suprime-Cam」で取得された、非常に高品質の星空の画像が使われていました。この他にも、いろいろな施設を見学したり、最先端の研究の解説を聞いて回ったりしました。


中華鍋で衛星放送の電波をキャッチ



 
銀河探しゲームに挑戦中











 天文ゼミでは、例年、国立天文台の特別公開日に見学に行っています。最先端の研究の現場に行って、その空気を触れることがその目的の一つです。実際に、現場で物を見て、人の話を聞くことは重要な経験になりますから。

三鷹・星と宇宙の日2013見学報告
石垣島でゼミ合宿(天文ゼミ2015年夏合宿報告)