2015年5月24日日曜日

【学問のミカタ】 学問としてのスポーツって??

 スポーツ関連科目担当の遠藤愛です。私の担当科目「スポーツの科学a・b」では、スポーツについてさまざまな角度から見つめた講義を行っていますが、そもそもヒトの身体を介して行われる“スポーツ”というものを学ぶとはどういうことなのでしょうか。
 
フランス滞在中の相澤です。
遠藤先生の記事に触発されて、
全仏オープンを観戦してきました。
スポーツ科学では、運動をすることによって我々の身体にどういった変化が生じるのか、運動を行う時の身体の動きはどのようになっているのか、優れた競技者と一般人の間にどのような違いがあるのか、あるいは用具の開発など、多種多様な課題に対してさまざまな手法を用いて研究が進められています。私の専門は競技力向上を目的としたコーチングですが、研究方法として、競技力が異なるグループ群、一般人と競技者、同一人物のトレーニングの前後などについて、バイオメカニクス的、運動学的、生理学的な見地から比較検討していきます。

 この他にも運動を通して病気を予防し健康になるため、スポーツ障害の予防や回復を予防するためといったスポーツ医学、球団や組織の運営、経営について学ぶスポーツビジネス、社会におけるスポーツのあり方に言及するスポーツ文化など、さまざまな研究が行われています。

 科学的分析によって、肉眼では把握できない筋肉の動き、発揮された力,用具の軌道、打たれた・投げられたボールの速度などを数値化、可視化することは可能ですが、実際に運動を行った運動主体者の動いた感じを数値化することは非常に困難です。

開催前日、センターコートでのエキシビションマッチ。
スタンドにひしめく大観衆。気分上がります!
今の時期のフランスは日が長いので、
スタンドに照明施設はありません。

 しかし、本当に理解するためには、運動を行ったヒトはその時にどのような思いで行ったのか、どのようなことを感じていたのかを明らかにすることが重要だと思います。科学の力を過信し、運動主体者の主観を置き去りにした研究は、運動の本質を明らかにしたことにはなりません。こうした問題点は多くの研究者からも指摘されています。

こちらは大会本戦の女子シングルス一回戦。
スポーツの科学の英知を結集してトレーニングしてきた
選手たちのプレイを目の当たりにしました。
テレビでは味わえない「現場」の臨場感でした!

 私が行う講義においても、講義で得た知識を学生の皆さんが活用して初めてスポーツの本質の理解へと近づくものだと考えています。スポーツを学ぶということは、理論と実践を行うことによってようやくその目的を遂げられるのでしょう。私は私の講義を通して、学生の皆さんがそれまで知らなかったスポーツの一面を知り、スポーツに対する理解を深めて欲しいと思っています。

 たしかに情報通信網が発達した今日では、現場に行かなくてもさまざまな情報をオンタイムで入手することができます。しかし、スポーツはやはり現場が命です。現場に行って選手の表情を見て呼吸を聞き、肉体がぶつかる音、足音、打球音など、見る側の五感をフルに活用して見て欲しい。スポーツの現場には文字にも数字にも現れないスポーツの本質があります。

 受講生が講義を通して得た知識をもとにそこから是非、それぞれの考え、体験の場を広げていって欲しいものです。スポーツが行われている現場に足を運ぶ、自分の体を動かしてみるといった実体験を是非、実践してみてください。

【参考】「スポーツの科学」「遠藤ゼミ」での2014年度の取り組み例
・「国立スポーツ科学センターを見学しました
・「遠藤ゼミ 楽天オープンテニス観戦
・「福井烈氏のゲスト講義:6月5日『スポーツの科学a』
・「西武ドームでスポーツ観戦!:遠藤ゼミの活動